「納得いかない!」後遺障害認定に対する異議申立書の書き方
交通事故により負ったケガで後遺症が残ってしまった場合には、後遺症による損害を請求するため、後遺障害等級認定の手続を行う必要があります。
その後遺障害等級認定の結果について不服のある場合には、認定結果の変更を求めるための異議申立の手続を行う必要があります。
後遺障害認定に対する異議申立を行う際には異議申立書を作成して提出します。異議申立書の記載内容は、異議申立に対する判断に少なからず影響を及ぼすものですから、異議内容のポイントを押さえて慎重に作成する必要があります。
そこで、今回は後遺障害認定に対する異議申立書の書き方について解説します。
このコラムの目次
1.後遺障害認定に対する異議申立とは
まず、そもそも後遺障害認定に対する異議申立の手続とは何かについて説明します。
(1) 後遺障害認定した機関に再度認定について再考してもらう手続
後遺障害認定に対する異議申立は、一度後遺障害認定に関して結論を下した機関に対し、再度後遺障害認定について考え直してもらうための手続になります。
しかし、一度判断した機関によりなされることから、基本的に当初の後遺障害等級認定結果を変更してもらうことは難しいといわれています。
(2) 異議申立の手続に要する時間と制限回数
後遺障害認定に対する異議申立の判断には、通常2ヶ月以上かかります。
また、異議申立に回数の制限はなく、異議申立に対する結果に対し更に何回でも異議申立することもできるのです。
ただし、何度でも異議申立できるとはいえ、以下の2点には注意してください。
①後遺障害による損害の賠償請求には時効がある
第1に、後遺障害による損害についての自賠責保険金請求権・加害者に対する損害賠償請求権は、症状固定日の翌日から3年が経過すると(自賠責保険金請求権に関しては平成22年3月31日以前の交通事故の場合には2年)時効により消滅します。
何度でも異議申立できるとはいえ、その間に時効期間の経過により自賠責保険金請求や加害者に対する損害賠償請求ができなくなってしまわないよう注意しましょう。
後遺障害認定の異議申立の手続中に時効が迫ってきた場合には、時効期間の進行を止めるための手続をする必要があります。時効により賠償請求できなくなってしまう不利益を被らないためにも、時効が迫ってきたときには弁護士に相談するとよいでしょう。
②新たに病院から証拠となる資料を入手する必要がある
第2に、後遺障害認定に対する異議申立においては、新たな医学的証拠等の資料を提出する必要があり、新たな資料を提出できなければ異議申立する意味はほとんどありません。
2.異議申立を成功させるためのポイント
(1) 後遺障害認定の判断基準に該当することを示す
後遺障害認定では、後遺症の内容に応じて認定の基準が設定されています。
異議申立を成功させるためのポイントは、この認定基準に該当する事実を説得的に伝えることに尽きます。
(2) むち打ち症状についての異議申立のポイント
ここでは、いわゆるむち打ち症といわれる症状についての異議申立について説明します。
むち打ち症による症状についての後遺障害は、神経症状として14級と12級の後遺障害認定の可能性があります。
14級の認定基準は、症状の一貫性と継続性により自覚症状の訴えについて医学的に説明可能であることです。
また、12級の認定基準は残存症状について画像所見や客観的検査の異常などにより医学的に証明可能であることです。
なお、そもそも残存症状と交通事故との因果関係のあることは大前提ですから、加齢などの事故以外の原因による症状を指摘された場合には、事故との因果関係を証明するための資料を提出する必要があります。
(3) 後遺障害認定の準備は治療中から始まっている
一般的に、むち打ち症状は患者本人の自覚症状の訴え以外に、明確な原因となる所見を見つけることの難しい症状であると言われています。
そのため、被害者本人としては非常に辛い思いをしているにもかかわらず、後遺障害認定してもらえないことも少なくありません。
一度非該当の判断を下されてしまえば、異議申立により結果を覆すことは容易ではありませんから、治療中の段階から将来の後遺障害認定のことを考えて、できる限り長期間治療を続け、自覚症状は全て正しく担当医に伝えるなど注意しておく必要があります。
また、12級の認定を受けるためには画像所見が重要になりますから、治療の初期段階から画像検査を希望して画像資料を残しておくことも大切です。
3.異議申立書の書き方
それでは実際に異議申立書はどのように書けばよいのでしょうか。
特に書き方について決まったルールはありませんが、ここでは異議申立書の一般的な書き方について説明します。
まず、異議申立書に異議申立の趣旨を記載します。これは異議申立の結果として申立人として求める結果です。たとえば、12級の後遺障害の認定を求める場合には「12級の後遺障害認定相当である。」などと記載します。
次に、異議申立の理由を記載します。これは異議申立の趣旨に記載した結論の理由になるべき事情を記載するものです。そこでは、最初の認定手続では提出できなかった資料を引用しながら実際には後遺障害認定されるべき事情のあることを論理的かつ説得的に記載します。
4.異議申立において提出すべき新たな資料とは?
後遺障害認定に対して異議申立する場合には新たな医学的資料等を提出します。
具体的には、担当医の作成する意見書や「頸椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」「神経学的所見の推移について」や被害者本人が事故後の日常生活における支障について述べた「日常生活状況報告書」などの書面です。
また、最初の後遺障害認定の審査において画像等の資料を提出していなかった場合には治療終了後の画像診断の結果の分かる資料を提出することもあります。
さらに、交通事故と残存症状との因果関係を否定された場合には、事故による衝撃の程度を理解してもらうため、警察により作成された事故態様を記した実況見分調書、被害車両の損傷の態様を撮影した写真や修理の見積書などを提出することも有効です。
5.まとめ
交通事故による後遺障害の認定については異議申立の制度があります。異議申立の手続は、異議申立書と異議申立の審査において考慮してもらう新たな資料を提出することになります。
異議申立の書き方の基本は、異議申立により求める結論と理由を論理的かつ説得的に記載することです。
異議申立において提出する新たな資料としては、担当医の意見書、新たな画像所見、症状の推移を示す書面などです。
一般的に、後遺障害認定の異議申立は最初に判断した機関と同じ機関により審査されるため、成功する可能性は低いといわれています。
しかし、後遺障害認定されるべきことを論理的かつ説得的に示すことができれば認定結果の覆ることがあるのもまた事実です。
もし、後遺障害認定の結果に納得することができず異議申立を考えているのであれば、一度交通事故に精通している弁護士に相談しましょう。
泉総合法律事務所では、後遺障害認定の段階からでも交通事故の被害者の方をサポートしております。また、治療中の段階でも「相談や依頼はまだ早いなど」と思わず、お早めに当事務所の弁護士にご相談ください。