不倫慰謝料

不倫慰謝料の相場はいくら?

不倫をされてしまった場合、ただ離婚を考えるだけではなく、慰謝料を請求したいとお考えの方は多いと思います。
では、不倫の慰謝料はいくら程度もらえるのでしょうか。

この記事では、不倫慰謝料の相場や過去の裁判例をご紹介し、不倫慰謝料の金額を左右する要素について解説します。

1.不倫の慰謝料請求とは

不倫と言っても様々ありますが、法律上慰謝料を請求できるのは、原則として、不貞行為(民法770条1項1号)にあたるものだけです。
不貞行為とは不倫相手と肉体関係がある場合を指しますので、肉体関係がなく、ただ外食をしていた、遊びに行っていたというだけでは足りません。

そして、不貞行為により夫婦の婚姻生活が破綻したり、平和な婚姻生活を侵害されたりした場合、基本的には慰謝料を請求することができます(民法709条、710条)。
逆に、不貞行為の前から婚姻関係が破綻していた場合は、そもそも慰謝料請求はできません(最判平成8年3月26日)。

慰謝料は、不倫によって不貞行為をした配偶者に請求することもできますし、不倫の相手方に請求することも可能です。ただし、双方から全額の慰謝料を受け取ることはできません。

したがって、配偶者又はその不貞相手のどちらか一方から相当額の慰謝料を獲得した後は、他方に対しその後に請求しても、その分控除の方向で斟酌されるか、場合によっては、請求が認められないということもあります。

2.不倫慰謝料の相場

それでは、具体的に不倫された場合の慰謝料はいくらになるのでしょうか。

不倫に限りませんが、慰謝料の金額については法律の規定はありません。
被害者が受ける精神的苦痛・損害の度合いは人によって異なりますし、不貞行為の態様も様々ですので、いくら請求できるかは基本的には事案によります。

しかし、これまでの裁判例の蓄積等で、「こういう場合は大体いくらになる」という相場ができています。

この相場は、夫婦が別居・離婚をする場合には100~300万円程度、別居も離婚もしない場合には50~100万円程度が多いです。
300万円を超えるのはいくつか高額になる要素がある場合がほとんどです。どのような場合に高額になるかは後半で解説します。

(1) 高額すぎる請求は意味がない

もちろん、請求するだけならいくらでも請求できますが、あまりに高額を請求しても相手が払えなければ意味がありません。
また、相手方が徹底的に争う姿勢になり、支払まで長期化してしまうリスクもあります。内容証明郵便を送付し交渉で解決する場合でも、訴訟になってしまうかもしれません。

ですので、ご自分で直接請求する場合も、調停や訴訟で請求する場合も、大きく相場から外れないことがポイントになります。

(2) 統計から見る慰謝料相場

東京家庭裁判所で判決に至った事件の統計からも、概ね同じ傾向を見て取ることができます(「離婚訴訟における離婚慰謝料の動向」神野泰一 ケース研究322号26頁以下)。

2012年4月から2013年12月までに、東京家庭裁判所で不貞行為が問題になった離婚訴訟は44件です。そのうち29件が認められ、慰謝料の平均認容額は223万円でした。
また、300万円を超えた事件は4件だけです。

これは裁判で判決に至った事件の統計ですが、調停等でもあまり差はありません。基本的には300万円以下の範囲内が不貞行為の慰謝料相場と言えます。

不倫慰謝料の裁判例

ケース1 東京地裁平成21年4月8日 認容額800万円
夫の不貞行為が17年間続き、不倫相手が夫の子どもを出産。妻の生活が困窮し、相場より高額が認められたケース。

ケース2 東京地裁平成24年3月29日 認容額300万円
婚姻期間15年以上の夫婦で、不貞行為によって破綻。婚姻期間の長さで増額されたケース。

ケース3 東京地裁平成4年12月10日 認容額50万円
夫が職場の女性と不貞行為に及んだものの、夫婦関係が修復されたケース。

3.不倫慰謝料を決める主な要素

不貞行為の慰謝料は、被害者の精神的苦痛に対する賠償の性質を持ちますから、当然ながら被害者が受けた損害について考慮します。
とは言え、苦痛の程度を単純に金額に換算するのは非常に難しいため、その他の要素も参照しながら総合的に判断されます。

調停や裁判では主に以下の5つの点を考慮して判断されます。

  • 不貞行為の回数、期間や頻度
  • 婚姻期間、婚姻生活の状況
  • 不貞行為に及んだ経緯、動機
  • 子どもの有無や年齢
  • 年齢、職業、収入

以下でそれぞれ個別に解説します。

(1) 不貞行為の回数や頻度、期間

不貞行為の程度について、回数や期間などから考慮します。慰謝料額に最も影響する要素の一つです。

数カ月間で2,3回の不貞行為よりも、10年間毎週のように続いた不貞行為のほうが悪質です。
当然精神的苦痛も大きいと考えられるため、期間が長く、回数が多いほど、慰謝料は高額になります。

(2) 婚姻期間、婚姻生活の状況

夫婦の婚姻期間が長いほど高額になります。

同じような不貞行為についての慰謝料であっても、婚姻期間によって50万円~150万円差が出ることも珍しくありません。
婚姻期間が1,2年だと短いと判断される傾向にありますが、10年を超えると増額される可能性が出てきます。

また、不貞行為までの婚姻生活が円満であるほど高額を請求できます。

(3) 不貞行為に及んだ経緯、動機

不貞相手の積極的な働きかけによって配偶者がやむをえず不貞行為に至った場合には、不貞相手に対する慰謝料額は高くなる傾向にあるといえるでしょう。

(4) 子どもの有無や年齢

幼い子どもがいる場合、慰謝料は高額になります。
子どもを含めた平和な家族関係を破綻させたことや、育児中に不倫されるという苦痛を考慮されるからです。

しかし、基本的に成人した子供は慰謝料増額の理由にはなりません(未成年であれば考慮されます)。

(5) 年齢、職業、収入

総合して財力と言うこともできますが、相手の社会的地位が高く、収入も多い場合は、高めの慰謝料が認められる可能性があります。
ただ、他の要素と比べると、これによって大きく慰謝料が変わるというものではありません。

これらの他、反省と謝罪がしっかりなされたかどうかや、不倫を断ち切ったかどうか、不貞行為前の夫婦関係等、様々な事情を考慮して、慰謝料額が決まります。

4.不倫慰謝料の請求で迷ったら弁護士にご相談を

不倫された慰謝料を請求したい場合、離婚するかしないかはともかく、慰謝料がいくらになるかは誰もが一度は考えることだと思います。

とは言え、慰謝料を請求してそのとおり払ってもらえるとは限りませんし、相場より高すぎる請求をすると、かえって話がこじれてしまう可能性もあります。

ご自分で直接請求したいとお考えの方も、ぜひ一度弁護士に相談し、ご自分の状況でいくらなら慰謝料を請求できるのかを確認することをおすすめします。

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