自己破産の費用(東京地裁)|破産は自力でできるのか?
借金を解決するための方法の1つに「自己破産」というものがあります。
自己破産に成功すれば、借金を原則として全て帳消しにすることが可能です。
しかし、自己破産をするには、裁判所にお金を納めなければなりません。
また、弁護士に自己破産の依頼をすると、弁護士の報酬を払う必要があります。
自己破産をする人は基本的にお金に困っています。中には弁護士費用を抑えるために「弁護士に依頼しないで、自力で自己破産してみよう」と考える人も出てくるでしょう。
問題は「果たして自分の力だけで自己破産をすることは可能なのか?」ということです。
もし、自己破産が簡単にできる手続ならば、わざわざ弁護士にお金を払って依頼などせずに、誰もが自分で手続を行なうでしょう。
しかし、現実に、わざわざ弁護士に依頼して自己破産をする人がいるということは、それなりの理由がある筈です。
この記事では「自力で自己破産ができるのか?」と、それが無理な場合に「弁護士に依頼するときのお金をどう工面するのか?」をメインに紹介していきます。
このコラムの目次
1.自己破産を自力で行うことは可能?
まずは「自己破産を自力で(弁護士に依頼せずに)成功させられるのか?」について考えていきましょう。
(1) そもそも自己破産とは
自己破産手続は、「破産法」という法律に基づく制度です。
自己破産をするには、管轄裁判所に対して「破産申立て」というものをしなければなりません。
破産手続の管轄裁判所は、申立を行なう債務者の現住所地を基準に決まります。
渋谷区在住の方の場合は、東京地方裁判所が管轄裁判所となるので、こちらに申立てる必要があります。
裁判所では、基本的に、法律その他の規則に則って手続が進んでいきます。
この「法律に基づく」という部分が、破産を申し立てる「破産申立人」にとってのハードルとなります。法律に基づく手続のため、融通が効かないからです。
そのため、定められた「書類」をたくさん用意しなければなりませんし、「裁判所の指示と判断」にも従わなければなりません。この2つが、手続に疎い利用者を悩ませるのです。
(2) 必要書類が多い
自己破産をするには、様々な書類が必要になります。
一部には、裁判所に所定の書式の用紙が用意されており、それに書き込めばいい書類もありますが、書き込むための情報を収集・整理するだけでも大変です。
例えば、債権者の名前や住所、現在の借金額などについては、全債権者の分を漏れなく正確に記入しなければなりません。
また、自分の財産の内容や価格を記載する書類もあります。
現金や預金残高などなら、すぐに調べて書くことができますが、有価証券や不動産や車の評価額、保険の解約返戻金から退職金の予定額まで記載する必要があるので、その情報収集に手間取ることになるでしょう。
作成する書類以外に、集める書類も多岐にわたります。
特に多いのが、自分の財産を証明するための書類です。
通帳のコピーはもちろん、不動産などの評価額、保険の解約返戻金の額、退職金の予定額などがわかる書類まで、様々なものが必要となります。
自分で書類を作るのと集めるのは時間がかかりますし、その間にも債権者からの督促は止まりません。
しかも、書類に不備や不足があると、裁判所から修正を命じられます。
それに応じることができなければ、最悪の場合、自己破産の手続を打ち切られてしまうこともあるのです。
(3) 裁判所の指示と判断が厳格
書類の準備と双璧をなすハードルが「裁判所の指示や判断」です。
①自己破産の手続を開始する判断をしてもらえるのか?
自己破産を利用できる条件の1つに、「支払不能状態であること」という決まりがあります。
この「支払不能状態」であるかないかの判断には、明文化された規則がなく、裁判官の判断に委ねられているのが現状です。
借金の額が多くても、収入や財産がある程度存在する場合は、支払不能状態とは認めてもらえないことがあります。
自分では「もう支払不能だ」と思っていても、裁判官が「まだ支払可能である」と判断すれば、自己破産はできません。
支払不能か否かの判断は、財産、信用、労働による収入を総合的に検討して判断されるものなので、無職であるからといって、直ちに支払不能という判断になるわけではありません。
また、家計を共にする夫婦のそれぞれについて支払不能か否かを判断する際は、特段の事情のない限り夫婦全体の家計をもとにして統一的に判断するものとされているので、アルバイトもしていない専業主婦の人が破産を申立てても、それだけで直ちに支払不能ということにはならず、家計を共にする夫の収入・財産の金額や、夫固有の負債の有無・金額等の事情次第では、支払不能とまでは認められない可能性があります。
あるいは、住宅ローンのある自宅に住んでいて、住宅ローンを含めた毎月の借金の返済が最早継続困難だったとしても、その自宅の価値が上がっていて、自宅を売却したときに、住宅ローンを完済した上なお余剰金が出るような場合は、支払不能とは認められない可能性があります。
このように、支払不能か否かについての裁判所の判断は、債務者本人の素人感覚での判断とは結論にズレが出る可能性を常に含んでいるものなのです。
②面談で良い判断をしてもらうにはどうすればいいのか?
自己破産の手続には、裁判官や破産管財人(裁判所が選任する弁護士で、破産手続を実際に取り仕切る人)との面談があります。
裁判官等との面談では、借金をした経緯や、財産の内容、反省すべき点(どうして破産するまで借金を作ってしまったと理解しているのか、今後同じことを繰り返さないためにはどうすべきと考えているのか)等を問われます。
ここで変な受け答えをすると、裁判官らの心証を悪くしてしまい、自己破産の手続に何らかの悪影響が出るかもしれません。
③裁判所の指示をどう守ればいいのか?
裁判官や破産管財人は、破産申立人に対して様々な指示を行います。
例えば、書類の不備不足の修正であったり、財産調査への協力要請であったりと、その内容は多種多様です。
これに対応できないと、やはり自己破産の手続に支障を来たします。
④借金を帳消しにしてもらえるのか?
自己破産によって借金を帳消しにしてもらうことを「免責」と言いますが、裁判所が免責の判断をするかどうかは、一般人にとって判断が難しい部分があります。
例えば、破産法には、「借金の理由が浪費やギャンブルの場合は、原則として、免責を許可しない」などの規定(免責不許可事由)があります。
実際には、「裁量免責」と言って、(免責不許可事由に引っかかる人であっても)裁判官が自己の裁量で免責をすることも法律上は認められていますが、あくまで裁量ですので、最終的に裁量免責をしてもらえるのか不安な人もいるでしょう。
[参考記事]
自己破産ができない?免責不許可事由とは
2.弁護士がいれば安心な理由
自己破産を自力で行なうのは、法律的には不可能なことではありませんが、実際にやる場合には、前述のとおり、素人にとって対応が難しい部分が多数あります。
しかし、弁護士に依頼するだけで、多くの問題がたちどころに解決します。
(1) 督促が止まる
まず、弁護士に破産手続を依頼すると、弁護士が「受任通知」というものを各債権者に送付します。
通知を受け取った債権者(金融機関や消費者金融など)は、その後は、弁護士を介さなければ、債務者とやり取りすることができなくなり、その結果、債権者から債務者への電話や手紙、訪問による督促行為はストップします。
弁護士への依頼段階でしつこい督促が止むので、ひとまずは落ち着いた生活ができます。
(2) 書類作成や裁判所とのやり取りを代行してくれる
弁護士は、本人に代わって、自己破産に必要な書類を作ってくれます。
もし債務者本人で集めなければならない書類があっても、集め方を教えてくれる筈です。
事例によって必要な書類は違いますが、ケースに応じた必要書類を教えてくれるでしょう。
また、申立も含めて、弁護士が裁判所に行って大部分の手続を行なってくれるので、債務者本人が裁判所に行く必要がほとんどありません。
裁判所や破産管財人の指示があっても弁護士が対応してくれますし、債務者本人がどう対応すればいいかも教えてくれるでしょう。
裁判所で行なわれる面談のときも、弁護士が横についてサポートくれるので、正しい対応ができる筈です。
(3) 「支払不能状態」か判断してくれる
前述のとおり、自己破産の条件の1つに「支払不能状態である」というものがありましたが、弁護士に相談すれば、「これなら裁判所が支払不能状態だと認めてくれそうですね」などと、申立後の見通しを見積もってくれます。
もし支払不能状態でなければ、別の借金解決方法(個人再生、任意整理など)を提示してくれるので安心です。
(4) 免責を得られるように行動してくれる
弁護士なら、自己破産を申し立てる前に「免責を受けられそうか」の見通しについても見積もってくれます。
もし何か問題があった場合でも、「どうやったら裁量免責を得られるか」を考えてくれますし、それに応じた行動・助言もしてくれます。
結果として免責を受けられる可能性が高まり、借金を無事に解決することができるのです。
3.自己破産にかかる費用は?
弁護士が不可欠なのはおわかりいただけたと思います。問題は弁護士報酬です。
ここでは、裁判所に納める費用もあわせて掲載します。
(1) 弁護士報酬
弁護士報酬には、大別すると、相談料・着手金・(成功)報酬金などの種類があります。
現在、弁護士報酬の金額や算定方法は、各事務所で自由に設定できるものとされており、一律ではありませんので、ここでは、ご参考までに当事務所の例をご紹介します。
①相談料:無料
借金のお悩みに関するご相談の場合、何度でも無料とさせていただいております。
②着手金と報酬金:23万円~
自己破産には「同時廃止」という簡便な手続と、「少額管財」という複雑な手続きがあります。
実際の申立事件の統計を見ると、ほとんどの場合、自己破産は同時廃止で進められ、少額管財になるのは、免責不許可事由に該当する(その可能性がある)場合か、保有財産(債権者に配当できる財産)がある(その可能性がある)場合に限られます。
ただし、勘違いしないで頂きたいのは、破産法の建前からして、破産手続は管財事件で行なうのが原則であり、同時廃止は、免責不許可事由がないことが明らかで、かつ、配当する財産もないことが明らかな場合に、例外的に行なう手続である、という関係性です。
それにも関わらず、実際の破産事件のほとんどが同時廃止で処理できているのは、破産申立のほとんどが弁護士を付けての申立であるところ、申立に当たって、弁護士が同時廃止での処理を裁判所に認めてもらえるように、必要な事前準備を行なっている賜物なのです。
同時廃止及び少額管財の費用は、それぞれ以下のようになります(なお、着手金は、いずれも税抜き価格となります)。
- 同時廃止:着手金23万円(別途:事務手数料3万円)
- 少額管財:着手金32万円(別途:事務手数料3万円)
(2) 裁判所への費用
東京地裁に納める費用の内訳は以下の通りです(2020年4月現在)。
- 申立手数料:1,500円
- 予納郵券:4,200円
- 官報公告費:1万8,543円
- 引継予納金(同時廃止の場合):1万1859円
- 引継予納金(少額管財の場合):20万円以上
引継予納金とは、管財人の人件費のことです。債務総額によって変動するものであり、20万円というのは、管財予納金の最低水準です。
これに対し、同時廃止の場合は、管財人の予納金は必要ありませんので、トータル4万円ほどで済みます。
なお、追加情報として、東京地裁の住所や連絡先、窓口などを記載します。
〒100-0013 東京都千代田区霞が関1丁目1の2
東京家庭・東京地方・東京簡易裁判所合同庁舎(法務省合同庁舎C棟)5階 民事第20部
03-3581-3483または03-3581-3548
4.弁護士への支払いが厳しい場合
自己破産をするには、同時廃止の場合でも、裁判所費用と合わせて、30万円ほど必要です。
お金に困って自己破産をする人にとっては、これは大きな金額でしょう。
しかし、お金を捻出する方法はあるので、ぜひ参考にして下さい。
(1) 無料相談を活用
初回無料相談を実施している法律事務所は多いので、そういったところを探しみましょう。
ちなみに、当事務所は、前述の通り、借金のことなら何度でも相談無料です。
(2) 分割払い可能な事務所も多い
弁護士費用の分割払いに対応している法律事務所もあるので、相談のときに聞いてみることをお勧めします。
一括で支払うのは厳しくても、「月々数万円を数回に分けて払うのであれば可能」という人は多いでしょう。
これならば、支払いのハードルがグッと下がります。
(3) 督促が止んだ分の支払いを弁護士費用に回す
弁護士が債権者へ受任通知を送れば、既に述べたように本人への督促がストップします。
これ以降、督促を受けて支払っていたお金を払わなくて済むようになるため、その分を弁護士費用に回せるようになります。
これまで借金の支払いに使っていたお金を積み立てておけば、弁護士費用の捻出も可能になる筈です。
5.自己破産は弁護士へ相談を
以上のとおり、弁護士へ依頼せずに自力で自己破産をすると、失敗の可能性が高くなります。
反対に、弁護士がいるだけで自己破産の成功率をぐんと高めることが可能です。
弁護士費用が不安な場合は、相談無料・分割払い可能な事務所を探すことで費用を捻出することもできます。
費用を気にしていると、いつまで経っても借金問題が解決しません。
苦しい生活から脱するために、できるだけ早く、泉総合法律事務所の弁護士にご相談下さい。
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