個人再生でマイホームが残せるって本当?
勤務先の急な休業や事業の行き詰まりで、収入が途絶える人が増えています。安定収入を見込んで住宅ローンを組んだのに、倒産・失業では途方に暮れてしまうでしょう。
住宅ローンは一時的に支払い猶予の交渉はできますが、いつかは支払わなければなりません。返済計画について相談をしても、将来的に支払いの目途が立たない場合は債務整理を検討しましょう。
債務整理にはいくつか種類があり、自己破産をすると住宅を没収されてしまいます。
しかし、個人再生ならマイホームを残せる可能性があります。
「個人再生」はあまり耳馴染みのない方も多いと思いますが、一体どのような制度なのでしょうか?
このコラムの目次
1. 個人再生とは
個人再生とは債務整理の一種です。
債務整理は主に任意整理、個人再生、自己破産の3つの制度がありますが、個人再生の特徴は次の3つです。
(1) 債務の大幅な減額が見込める
個人再生は借金の大幅な減額が見込める制度です。
借金の減額幅は負債額などによって異なりますが、およそ5分の1~10分の1程度まで借金を圧縮できます。もっとも、最低弁済額は100万円なので、借金額が100万円程度であれば、任意整理の方が良いことが多いでしょう。
債務整理のうち任意整理は債権者との直接交渉をするので、個人再生や自己破産に比べて手続は簡単です。
しかし、任意整理は減額幅が小さいので、借金額が多い人や大幅減額を目指す人には不向きです。
もう一つの自己破産は借金の全額免除を受けられますが、資産価値のある財産は没収されますので、当然、マイホームも没収対象となります。
個人再生は任意整理と自己破産の中間的な制度で、借金の大幅減額が可能ですが、財産没収はされません。
ただし裁判所を通した厳格な手続きとなるので、準備すべき書類は多く、認可までのプロセスも複雑です。
[参考記事]
個人再生とはどんな手続きなの?
(2) 住宅ローン特則がある
個人再生の最大の特徴は「住宅ローン特則」がある点です。正式名称は「住宅資金貸付債権に関する特則」で、任意整理や自己破産にはない特別な制度です。
個人再生はもともと会社向けの救済制度である民事再生法を改正して、住宅ローン返済に苦しむ個人を救済するために作られました。法改正は2001年ですので制度としては比較的新しいものです。
個人再生には債権者平等の原則があるので、手続に際して特定の債権者だけ外すことは認められていません。原則として全ての債権者が整理対象となります。
しかし、住宅ローンには銀行や保証会社の抵当権がついているので、債務整理に含まれると競売にかけられて売却をされてしまうのです。
その場合、債務者は住むところを失ってしまうので、その後の生活に甚大な悪影響を与えてしまいます。個人再生ができたところで、経済的な再建は険しい道のりとなるでしょう。
そうした事態を防ぐために、個人再生では住宅ローン特則が特別に設けられ、制度の適用により個人再生の対象から住宅ローンを外せることになっています。
住宅ローン特則が適用されれば、マイホームにそのまま住みつつ、住宅ローン以外の借金を減らせるので、経済的な再起を図りやすくなります。
2.住宅ローン特則を利用する場合の注意点
ここからは、住宅ローン特則の利用について解説をします。
住宅ローン特則は誰でも利用できるわけではなく、適用には一定の条件があります。どれか一つでも当てはまらない場合は利用できません。
また、仮に利用条件を満たしていても、実際に利用する際にはいくつか注意点すべき点があります。
(1) 住宅ローン特則の利用条件
住宅ローン特則を利用する際は、次の7つの条件をクリアする必要があります。
- 住宅ローンまたはリフォーム代金であること
- 債務者本人が所有する本人居住用の住居であること
- 銀行や保証会社の抵当権が設定されていること
- 保証会社の代位弁済を受けた場合、代位弁済から6ヶ月を経過していないこと
- 住宅ローン以外の負債の抵当権が設定されていないこと
- 再生計画の弁済と住宅ローン返済を両立できる収入があること
(2) 住宅ローンの返済は続ける必要がある
住宅ローン特則が適用されれば、住宅ローンを個人再生の整理対象から外すことはできますが、それで住宅ローンの支払いが免除されるわけではありません。
住宅ローンについては個人再生後も引き続き返済を続ける必要があります(ただし、返済についてリスケジュールができる場合もあります)。
また、個人再生をすればその他の借金が減額されるので、手続き前よりは住宅ローンの返済も楽になるでしょう。
(3) 清算価値保証の原則で債務額が上がる可能性
住宅ローン特則の適用で気を付けなければならないのは、住宅の資産価値が住宅ローン残高を上回る場合です。
個人再生には「清算価値保証」の原則があります。清算価値保証の原則とは、持っている財産以上の弁済はしなければならないというルールです。
個人再生には法律で定められた最低弁済基準額がありますが、清算価値保証の原則により財産の処分価格が最低弁済基準額を上回った場合は、財産相当の弁済をしなければならないのです。
例えば、300万円の借金について個人再生をする場合、最低弁済基準額は100万円ですが、150万円の財産を持っているなら、再生計画に基づく支払額は150万円となります。
住宅ローンの話に戻ると、住宅の資産価値がローン残高を上回った場合、差額は財産とみなされます。
住宅ローン残高よりマイホームの資産価値が大きく上回る場合は、再生計画後の弁済額も高額になる恐れがあるので注意が必要です。
この場合、個人再生をするかどうかは、借金総額と清算価値の差額次第ということになるでしょう。
3.マイホームを残して債務整理したい方は弁護士へ
個人再生の住宅ローン特則が適用されれば、住宅ローンを個人再生の対象から外せるので、マイホームを残して債務整理ができます。
しかし、住宅ローン特則の適用には厳格なルールがあり、住宅ローン残高と資産価値の関係についても慎重に検討しなければなりません。
個人再生は複雑な手続きですので自力で成功させるのは至難の業です。また住宅ローン特則の適用可否は専門家の判断が必要です。
手続に失敗をするとマイホームを失ってしまう恐れがあるので、弁護士と相談をしながら手続きを行いましょう。
泉総合法律事務所渋谷支店では個人再生の解決事例が多く、マイホームを残して債務整理を成功させた実績も豊富です。
借金に関するお悩みは、ぜひ一度、泉総合法律事務所渋谷支店の弁護士へご相談ください。
個人再生のご相談は何度でも無料です。また、弁護士費用については分割払いに対応しているので、費用の心配をすることなくお気軽にご相談下さい。
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