債務整理

借金を解決できる個人再生とはどんな手続きなのか

借金でどうしようもなくなった場合、「債務整理」をすれば借金問題を解決することができます。

債務整理の1つに「個人再生」というものがあります。
債務整理というと「自己破産」が有名ですが、個人再生には他の債務整理にはない様々な特徴があるため、利用すべき人が利用すれば特有のメリットを受けられます。

この記事では、借金でお困りの方のために、個人再生の概要やメリットなどを紹介していきます。
債務整理を考えている方はぜひ今後の参考にしてください。

1.個人再生の概要

個人再生とは、借金を大幅に減額してもらい、残った借金を原則3年程度かけて毎月少しずつ分割返済していく債務整理です。
減額率は最大で90%にもなるため、一気に借金額を減らすことができる可能性があります。

個人再生をするには裁判所に申立てを行い、「再生計画」という返済スケジュールを提出して、それを認めてもらわなければなりません。
返済額が減るとはいえ継続的な返済が前提となるため、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがなければ、再生計画を認めてもらえません。

そのため、個人再生にあたっては、継続・反復して収入を得る見込みがあることを証明するための書類などが必要となります。

個人再生には様々な特徴がありますが、ここでは代表的なものを2つピックアップしてご紹介します。

(1) 住宅ローン特則という制度がある

住宅ローンを支払中の人が債務整理をした場合、大抵はローンの債権者が抵当権を実行して債権の回収を図ります。
その結果として債務者は住宅を失ってしまうのですが、個人再生の「住宅ローン特則」を利用すれば、住宅ローンを従来通り支払うことを条件に、住宅を手元に残したまま債務整理をすることができるのです。

住宅ローンは減額されないので総返済額はアップするものの、個人再生後も住み慣れた家に住み続けることができるので、マイホームを手放したくない人にとっては大きなメリットのある制度です。

「この制度があるから個人再生を選んだ」と言う人もいるほどの特徴的な制度と言えるでしょう。

(2) 解決できる債務の額に制限がある

個人再生を利用できるのは、債務総額が5,000万円以下の人です。
また、債務額が100万円未満の場合は減額を受けられないため、通常、個人再生をする意味がありません。

従って個人再生をする意味があるのは、債務額が100万円~5000万円の人に限られます。

債務額が100万円未満の人は任意整理を、5000万円を超える債務を抱えている人は自己破産を検討することをおすすめします。

個別の案件で本当に任意整理や自己破産をすべきかどうかについては、弁護士に相談すると良いでしょう

2.小規模個人再生と給与所得者等再生

個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2パターンがあります。

(1) 小規模個人再生

個人再生手続きにおいて、ほとんどのケースで選択されているのが小規模個人再生です。
その理由は、返済額の決め方にあることが多いとされています。原則として、小規模個人再生の方が後に説明する給与所得者等再生よりも減額率が高くなります。

①返済額の決め方

小規模個人再生では「最低弁済額」と「清算価値」の2つのうち、どちらか高い方が最終的な弁済額となります。

まず、法律で定められた「最低弁済額」ですが、以下のように債務総額によって変動します。

  • 債務総額100万円未満…最低弁済額=債務総額と同額(減額なし)
  • 100万円以上500万円以下…100万円
  • 500万円超~1,500万円以下…債務総額の5分の1
  • 1,500万円超~3,000万円以下…300万円
  • 3,000万円超~5,000万円以下…債務総額の10分の1

債務総額が100万円未満のときに個人再生をするメリットがほとんどないのは、この最低弁済額が関係しています。

次に「清算価値」ですが、これは簡単に言えば「自分の財産をすべてお金に換えたと仮定したときの金額」です。

現金や預貯金、不動産、車、有価証券、保険の解約返戻金、退職金等の全てを換金した場合の金額と同じ額は、個人再生後に最低限支払う必要があります。
これは「破産したと仮定したときに債権者へ配当される金額以上を支払うこと」という決まりが個人再生に存在するからです。

債権者にとって、個人再生は債権回収の権利を大きく奪われる制度です。
個人再生のせいで、債務者が破産したときよりも少ない金額しか債権者に行き渡らなければ、債権者は「個人再生じゃなくて破産してもらった方がマシだ」と思うでしょう。

債権者を少しでも救済するために、清算価値以上は支払う義務があるのです。

②債権者の反対によっては小規模個人再生ができない

小規模個人再生をするには、反対する債権者の数が全債権者の半数未満でなければなりません。

このときの「反対」とは、積極的に反対の意思を示した人のみをカウントします。
特に反対の意思を示さない人はカウントされません。

また、たとえ反対者の数が少なくても、反対者のもつ債権額が全債務者の持つ総債務額の2分の1を超えていれば、やはり小規模個人再生ができません。

(2) 給与所得者等再生

小規模個人再生と違い、給与所得者等再生は債権者の反対があっても行うことができます。
しかし、以下の注意点があります。

①支払額が上がる可能性がある

給与所得者等再生では、「最低弁済額」と「清算価値」に加えて「可処分所得の2年分」という条件が加わります。
この3つの中で最も高額なものが最終的な支払額となるのです。

可処分所得とは、簡単に言えば「手取り給与額から最低限の生活費を引いた金額」です。
「最低限の生活費」の計算方法などはお住まいの自治体によって異なります。

この「可処分所得の2年分」は、「最低弁済額」や「清算価値」よりも高額になりやすいため、結果として個人再生後の支払額が上がってしまう可能性が高くなります。

②収入に関する要件が厳しい

個人再生をするには反復・継続した収入が必要ですが、給与所得者等再生をする場合は「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり」、「収入の変動幅が少ないこと」という条件が追加されます。
このため収入の変動が大きい自営業者等は、給与所得者等再生を利用できない可能性が高いです。

「給与所得者等再生」という名前の通り、給与所得者がメインの対象となるのです。
ただし、正社員でなくアルバイトやパートであっても、定期的な収入が将来にわたって継続すると考えられる人であれば、給与所得者等再生を利用できる可能性が高いです。

一方で、単発バイトを渡り歩いている人などは、給与所得者等再生を認められないかもしれません。

【過去7年以内に自己破産などをしていても利用できない】
給与所得者等再生は債権者の反対を無視して行える個人再生なので、乱用はできません。過去7年以内に以下のことがあった人は、給与所得者等再生を利用できなくなります。
・自己破産による免責を受けた
・給与所得者等再生で借金を減額してもらった
・ハードシップ免責を受けた

3.個人再生のメリットとデメリット

最後に、個人再生のメリットとデメリットを紹介していきます。

(1) メリット

①受任通知送付で取り立てが止まる

個人再生は通常、弁護士に依頼して行います。
弁護士に依頼すると弁護士から各債権者に「受任通知」というものが送られます。

これを受け取った銀行や消費者金融、クレジットカード会社等の債権者は、それ以降債務者に直接連絡してはならず、弁護士を通さなければならなくなります。

そのため督促が止み、表面上は落ち着いた生活を送ることができます。

②借金が減り、分割払いになる

借金を滞納している人の中には、一括返済を求められている人もいるでしょう。

個人再生に成功すれば一括返済から分割払いになりますし、借金額そのものも減らすことができます。

③基本的に財産を処分しなくてもいい

同じ債務整理でも、自己破産をすると一定以上の財産が処分されてしまいます。
しかし個人再生では基本的に財産を処分する必要がありません

既に述べた住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローン支払中であってもマイホームをそのまま残せます。

例外的に、ローン支払中の自動車などは債権者に所有権があることが多いため、債務整理をすると回収されてしまう可能性があります。

しかし、ローン支払中のもの以外であれば基本的に手元に残せるため、個人再生後も前と同じような生活を送ることが可能です。

(2) デメリット

①返済を続けなければならない

個人再生は金額が少なくなるとはいえ、借金の返済が前提となる債務整理です。
再生計画通りに返済できなければ、最悪の場合個人再生が取り消されてしまうかもしれません。

そうなるとカットされたはずの借金が復活してしまい、債権者から一括返済を求められてしまいます。

無理なく3年間の返済を続けられるように、弁護士と相談しながら再生計画案を作ってもらいましょう。

②5~10年間は借金ができなくなる

個人再生をすると、その情報が金融機関やクレジットカード会社の間で共有されてしまいます。
銀行にローンを申し込んでも、消費者金融からお金を借りようとしても、クレカを作ろうとしても、基本的に審査に落ちて断られてしまうのです。

どうしてもローンを組みたければ家族名義にするなどの対応が必要となります。

③官報に載る

個人再生をすると住所や氏名が「官報」という国の機関紙で公開されてしまいます。

しかし、官報を見る人はほとんどいないので、そこから周囲に個人再生がバレてしまうことは滅多にありません。

④手続きが複雑で条件が厳しい

個人再生は他の債務整理とは格段に手続が難しいのがネックです。
必要な書類が多いですし、再生計画案を作るのは一般人にとってかなり難しいでしょう。

特に住宅ローン特則を利用する場合は書類が多くなるため、負担が大きくなります。

もし書類や手続に間違いがあり、それを修正できなければ、手続が打ち切られてしまう可能性もあります。

なお、東京地裁で個人再生をする場合、原則として弁護士を代理人にする必要があります。

4.個人再生でわからないことがあったら弁護士にご相談を

個人再生手続きには、一般人にとって難しい事柄がたくさん含まれています。

「どういった手続をすればいいのか?」「自分の最終的な弁済額はいくらになりそうなのか?」「小規模個人再生と給与所得者等再生ではどちらを選ぶべきなのか?」など、不安なことは弁護士に聞けば教えてくれるので、まずは法律相談にて質問して疑問を解消することをおすすめします。

また、弁護士なら個人再生だけでなく任意整理や自己破産にも対応してくれます。貴方にとって最も適切な債務整理方法を提案してくれるでしょう。
個人再生に限らず、借金の悩みがある人は一度弁護士までご相談ください。

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