刑事事件

盗撮事件で「前科」を回避するには?

盗撮をしてしまい前科が付くのを回避したい。
しかし、前科とはどのようなもので、どんな場合につくのかわからない。また、前科を回避するため具体的に何をしたらいいのか分からない。

その疑問に答えるべく、今回は盗撮事件における前科を回避する方法を、前科のデメリットと共に解説します。

1.前科

(1) 前科とは

前科とは、刑事事件で有罪判決を受けた経歴を言います。
そのため、例えば、犯罪を犯した疑いをかけられ警察に逮捕された場合、起訴され裁判になったが無罪判決になった場合、民事の裁判で負けた場合には、前科が付くことはありません。

刑事裁判で有罪判決を受けて確定した場合に前科が付くので、懲役刑ではなく禁固刑や罰金刑が科された場合にも前科が付きます。また、執行猶予の判決は有罪判決の一部のため、この場合も前科が付きます。

前科がつくと、それが消えることはありません。警察や検察官のデータベースに残り続けることになります。そのため、前科が付くか否かはとても重要です。

(2) 前科が付くことによるデメリット

前科を付くのを防いだほうが良い、というのはよく目にしますが、実際に前科が付いた場合、今後どのような影響があるのでしょうか。

①職場を解雇される

一般企業で勤務している場合、有罪判決が確定し前科が付くと、何かしらの懲戒処分が科されることがあります。悪質な盗撮事件だった場合には、懲戒解雇されることもあり得ます。

実は、民間企業の場合、会社の業務と無関係な私生活上の非行を理由とした解雇は、その非行行為が会社の社会的評価に相当に重大な悪影響を及ぼすと客観的に評価される場合を除いては、法的には無効な解雇です(※)
最高裁昭和49年3月15日判決

したがって、法的には、盗撮行為で解雇されることはないと言えるのですが、それでも事実上、解雇されてしまうことはあります。その場合、解雇が無効であると主張して、裁判を起こして会社側と戦うことは大きな負担ですから、あきらめざるを得ないケースが多いでしょう。

一方、国家公務員・地方公務員の場合、懲役刑、禁固刑の前科が付くことは欠格事由です。そのため、職を失うことになります。

また、一部の資格(弁護士、弁理士、公認会計士等)は、懲役刑、禁固刑が付くと、その資格を失い、刑の執行終了から10年が経過するまでは再登録はできません。

②就職が困難になる

履歴書に賞罰欄がある場合や、面接で前科の有無について聞かれた場合には、前科について面接先に知られることになります。そのため、就職活動において不利になるおそれがあります。

また、嘘をついて前科の有無を誤魔化して就職した場合、後に発覚すると経歴詐称となり、職場を懲戒解雇になることもあります。

③再犯した場合に起訴猶予をとりにくくなったり、刑が重くなったりする

前科は捜査機関のデーターに残り、次に犯罪の嫌疑をかけられたときに、盗撮による前科の存在はすぐに分かります。そのため起訴するか否かを決める際や、起訴されて裁判を受ける際に、不利な事情として考慮される危険があります。

④海外旅行に影響が出ることがある

前科が付くからといって、パスポートが無効になったり、海外旅行が禁止されたりするわけではありません。

しかし、渡航先の国によっては前科があることにより入国を拒否される場合もあります(前科の内容にもよります)。

2.盗撮で前科が付く場合

(1) 盗撮を処罰する法律

盗撮を処罰する法律は、主に以下の3つになります。

①迷惑防止条例

迷惑防止条例は都道府県ごとに定められています。

【東京都迷惑防止条例】
第5条
第1項柱書
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
第1項2号 
次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

具体的には、電車内やエスカレーターで人のスカートの中を撮影する行為、トイレや脱衣所に盗撮するためのカメラを設置する行為は盗撮にあたります。

違反行為に対する刑罰は、次のとおりです。

  • 撮影する行為……1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条2項1号)
  • 撮影機器を差し向け又は設置する行為……6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(8条1項2号)

なお、それぞれ常習犯の場合は、次のとおり、より重い刑罰となります。

  • 撮影する行為……2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条7項)
  • 撮影機器を差し向け又は設置する行為……1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条8項)

②軽犯罪法

【軽犯罪法】
第1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

盗撮の有無にかかわらず、このような場所をのぞき見したときは、この軽犯罪法違反になります。拘留は、1日以上30日未満の身体拘束、過料は1000円以上、1万円未満の罰金です。

③住居侵入罪(刑法130条)

なお、盗撮をするときに、人の住居や建造物に侵入した場合、住居侵入罪も成立します。刑罰は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。

(2) 盗撮で起訴・有罪となる場合

盗撮事件では、初犯で起訴・有罪となることは稀です。もっとも、場合によっては、初犯でも起訴され有罪となり前科が付いてしまうこともあります。

まず、行為態様が悪質だった場合が挙げられます。例えば、盗撮した動画を販売する目的やネット上で公開する目的であった場合や、撮影のために被害者を執拗に追い回した場合などです。

被疑者に反省の色が見られない、被害者の処罰感情が強いといった事情がある場合も、初犯でも起訴される方向に働く事情と言えます。

3.前科が付くのを防ぐ方法

前科を防ぐ方法は、不起訴処分を得ること、無罪判決を得ることです。

しかし、日本の司法上、無罪判決を得るのは至難の業です。というのも、検察官が起訴すると99.9%有罪とされると言われるほど、有罪率が高いためです。
そのため、前科を防ぐ方法としては「不起訴処分」を得ることを目指すことが重要です。

不起訴処分を得るためには、被害者と示談をすることが一番の近道です。

示談が成立する場合は、被疑者が被害者に慰謝料などの示談金を支払う代わりに、被害者が被害者を「宥恕する」(※)という合意をおこない、これを示談書という書面にします。
※宥恕(ゆうじょ)とは寛大な気持ちで許すという意味。「宥恕する」、「処罰を望みません」、「寛大な処分をお願いします」など、被害者が被疑者を許すという意味の文言を宥恕文言と言い、示談書に記載するのです。

検察官が起訴不起訴の判断をする場合には、諸般の事情を総合考慮します。

その際、示談が成立していれば、示談金の受領で被害者の被害が回復されたと評価でき、宥恕文言の記載で被害者の処罰感情も無くなったとみることができるので、
あえて起訴する必要はないと判断される可能性が高くなるのです。

もっとも、示談の適切な方法を知っている一般の方はほとんどいないと思われますし、仮に示談のやり方を知っていても、被疑者が具体的にそれを実践するのは困難を伴います。

被害者の連絡先を教えてもらうことはできませんし、そもそも被害者は被疑者やその家族などとのやりとりを拒否するケースが通常です。また一般の方には、示談金の相場金額さえわからないことと思います。

そのため、盗撮事件で示談を考えている人は刑事事件に詳しい弁護士に依頼するべきです。
弁護士は法律のプロであり、刑事弁護の専門家です。その知識と経験で、被害者との示談交渉を進めてくれます。

[参考記事]

盗撮事件に強い渋谷の弁護士に依頼するメリット

4.まとめ

盗撮事件で前科をつけないためには、示談をすることが最も効果的です。

渋谷区、目黒区、世田谷区、JR各線・東京メトロ銀座線、半蔵門線・東急線・京王線沿線にお住まい、お勤めの方で、盗撮事件でお悩みの方は、泉総合法律事務所渋谷支店の弁護士にぜひご相談ください。

盗撮事件・痴漢事件などの弁護経験豊富な弁護士が、示談成立に向けて誠心誠意サポートいたします。

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